映像業界に入り、かれこれ10年が経ちました。
この10年で、Youtubeを含むSNS動画の市場は倍増しています。
とくにコロナが蔓延した2019年から、動画マーケティングを扱う企業や店舗も多くなったと感じています。
当時、動画を活用する企業や店舗は、より多くの方に見ていただく(いわゆるバズ)ことで商品が売れると認識している方が多かったと思います。
バズる→売れる
それにより、いかに目立つ動画が作れるか、を目的とした動画投稿が目立っていました。
しかし、バズを狙った動画は、実はあまり意味がありません。
なぜなら、バズる仕組みは購入した消費者が購入体験をつぶやき、それによって共感した購入者が反応して拡がっていくもの。
投稿をただ見ただけの人がシェアしたり、爆発的に話題になることは現実的にはなかなか起こり得ません。
つまり、
- バズるから売れる
- 売れるからバズる
ということ。
それより大事なのは、買ってもらいたい顧客に提供したい価値をきちんと伝えられるかどうかなんです。
『ブランドの価値を伝え、長期的にファンを獲得する』
これが、これからの映像戦略に必要なことだと思っています。
そのためには、まず「誰にどんな価値を提供するか」の設計図が必要です。
「誰にどんな価値を提供するか」の設計図とは、いわゆるコンセプトです。
コンセプトを設計することで、以下のような要素が明確になります。
- 目的:「この映像で何を達成したいのか?」(例:ブランドの認知拡大、製品の魅力を伝える、感動を生む)
- ターゲット:「誰に向けた映像なのか?」(例:20代女性、ビジネスパーソン、親子)
- メッセージ:「何を伝えたいのか?」(例:環境の大切さ、商品の革新性、人生の美しさ)
- トーン&スタイル:「どんな表現が最適か?」(例:シリアス/ユーモラス/エモーショナル/クール)
これらを設計することで、映像の方向性がブレることなく、届けたい相手にしっかり伝わる映像になります。
コンセプトの必要性
コンセプト設計というと、少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えば「自分たちは何を大切にして、何をお客様に提供するのかをしっかりと決めること」です。
これがあると、会社やお店が進むべき方向が明確になり、お客様にも「このブランドを選びたい」と思ってもらえるようになります。
コンセプト=ブランドの価値
では、なぜコンセプトが必要なのか、3つの理由をお伝えします。
迷わないための指針になる
ブランド価値の設計図は、会社やお店にとって「地図」のようなものです。
ビジネスをしていると、「次は何をしたらいいんだろう?」とか、「この決断は正しいのかな?」と迷うことがありますよね。でも、ブランドの価値がはっきりしていれば、それに基づいて判断できるので迷いません。
コンセプトに沿って一貫したブランド要素があると、クリエイティブに変換しやすくなります。
例えば
Starbucks(スターバックス)
コンセプト:人と人をつなげる温かい空間を提供する
- ロゴデザイン → 柔らかな曲線のマーメイドロゴ(クラフト感・親しみやすさ)
- 店舗デザイン → 木材を基調とした落ち着いた内装(居心地の良さを演出)
- 接客スタイル → フレンドリーでカジュアルなコミュニケーション(顧客との温かい関係)
- 商品デザイン → ハンドクラフト感のあるパッケージ(ナチュラルでリラックスできる雰囲気)
- 広告・SNS → 季節感のある温かみのあるビジュアル、手書き風のイラスト
- ➡ 「リラックス・温かみ・クラフト感」という軸があるため、新メニューのポスターやCM制作時も方向性が明確になる。
お客様に分かりやすいメッセージを伝えられる
単に「良い商品です」と伝えるだけでは、お客様の心は動きません。
- 「このブランドなら信頼できる」
- 「ここに行けば自分が欲しいものがある」
と思ってもらうためには、ブランドの価値を明確にして、それをお客様に伝える必要があります。
スターバックスは、ただ「美味しいコーヒーを売るお店」ではなく、「人と人をつなげる温かい空間を提供する」 というコンセプトを持っています。
そのため、広告や店舗デザイン、接客スタイルに至るまで、すべてが「温かみ」や「人とのつながり」を感じられるようになっています。
その結果、スターバックスは 「ただのカフェ」ではなく、「居心地のいい空間を提供するブランド」として、多くの人から愛されているのです。
競争で埋もれないための強みになる
今の時代、どんなビジネスでも競争が激しいですよね。似たような商品やサービスがあふれている中で選ばれるためには、「このブランドならではの価値」が必要です。
コンセプトがあれば、自分たちの強みや独自性が明確になり、競合との差別化ができるようになります。
例えば、「環境に配慮したエコ商品を提供する」という価値観を大切にしているブランドなら、それを全面に押し出すことで特別な存在になれます。
まとめ
- お客様が「このブランドだから選びたい」と感じる理由が明確になる。
- 映像の方向性が定まり、ブレない構成ができる。
- 競合他社と差別化でき、市場での存在感が高まる。
コンセプトがあることで、ブランドの価値に基づいた一貫性のある動画を作ることができます。
それは「ただ目立つ」ものではなく、視聴者の心に響き、ブランドへの理解や共感を深めるものになります。
「消費される動画」ではなく、「積み重なる動画」を。
視聴者に強く響くメッセージを届けられるように、この設計図を作ってみてはいかがでしょうか?